【感想】NHKドラマ「火花」近年稀に見る傑作だった

火花

「火花」又吉直樹著。芥川賞受賞作。

火花 (文春文庫)

Netflixでもドラマ化していたが、いよいよ地上波でもドラマ化した。NHKが力を入れているのも伝わる。

ちなみに僕は原作小説は一切読んでいません。なぜならブームに乗るのが嫌だったから。それにどうせ有名人が書いたから、芥川賞取れたんだろという穿った見方もあった。

ブームが一段落し、NHKがドラマ化したということで、チラッ見てみた。面白い。今では毎週見てしまっている。こんなことは何年ぶりだろうか。

最近のドラマには珍しく、映画に近い雰囲気だ。お笑いという職業を扱っているが、ポップさを排除して、人間ドラマに絞っている。メインは主人公と師匠の葛藤。これに尽きる。

脚本術と哲学が見事に混じり合っている。どちらかに偏っていない。しかもそれでいて視聴者に媚びを売ってない。作者の言いたいことが、ヒシヒシ伝わる。

ストーリーと感想

主人公は若手芸人徳永。神谷はその師匠。といっても神谷も売れない芸人である。

神谷は「オレ、キャラ嫌いやねん。」「人の真似なんかせん。」と言っていた。型破りだが、面白い。美人の彼女もいた。お金がなくても、夢があり希望があった。徳永は神谷のような芸人に憧れていた。

ところが神谷は売れなくて、どんどん落ちぶれていく。彼女とも別れ、借金が膨らんでいく。

徳永が着実に売れていき、単独ライブをしたり、テレビに出たり、ファンを増やしていた。そんなある日、神谷が徳永と同じ髪色にし、服装も同じようなものを着ていた。神谷には新しい彼女ができていたが、あきらかに妥協しているのが分かる。神谷らしさは消えた。

神谷は徳永の漫才を見ても無表情だった。徳永の漫才は客受けするように、ベタに寄っていた。神谷はもっと徳永の好きなようにやったらいいのにと言う。この時、徳永は泣きながら神谷に反抗する。この場面は見ていて辛かった。

売れない辛さというのは想像を絶する。金が無い。仕事がない。軽蔑される。自分よりも客や先輩に媚びた面白くない芸人が売れていく。頭の固い構成作家や口ばかりのプロデューサーにヨイショした奴がテレビに出ていく。

あれほど自分を貫いていた神谷も、人の真似をするようになる。

これだけの葛藤を書ける人がいたんだと驚いた。しかも小説家ではなくお笑い芸人で。

さり気ないプロットがフリになっていたりするので、フランス映画みたいだ。これだけ面白いにも関わらず、視聴率は悪いらしい。

結局、客受けするものというのは分かりやすいものなのだろう。

そもそもお笑いが分かる視聴者がどれだけいるのだろうか?

一回目の漫才をフリにするとか。落ち着いたトーンのボケよりもハイテンションのボケのほうが子供や女子にウケやすいとか。真面目に漫才やっていたのに、ハプニングの笑いに持っていかれたときの失望感とか。

作者の凄いところは、作中に出てくる漫才のネタも手を抜いていないということだ。大体こういうところは手を抜きたくなる。なぜならプロットにはさほど関係ないし、ましてや読者がお笑いのことなど分かるわけがない。なのでさらっと書いて流せるところではあるのだが、本気で書いている。だからドラマの中の漫才と分かっていても笑ってしまうのである。

ちなみにスパークスの単独ライブのネタはわざとベタにしているのか面白くない。そういった細かい部分も書き分けている。

このドラマはもっと話題になってもいいと思うのだが、やはり玄人好みということなのだろうか。

単純に漫画原作、主人公役はアイドルにしてしまえば、脚本が面白くなくても、ヒットしてしまう時代。本物の作品が認められないのは、神谷と同じく辛いなぁ。

(記事執筆時点で8話目終了)

脱ぼっちしたい人へ

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