【感想】「笑いのカイブツ」偉いよ…ツチヤタカユキ

笑いのカイブツ

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ツチヤタカユキ「笑いのカイブツ」

行間も詰まってないし、元がWeb連載だからなのか、サクッと読めた。ざっくりですが感想を。

内容

笑いに取り憑かれた若者はケータイ大喜利のレジェンドになり、伝説のハガキ職人、さらに構成作家へ。悶々とした、行き場のない不満を、笑いにぶつける。青春を笑いに捧げた男の私小説。

笑いの狂人

ケータイ大喜利のレジェンドになろうと決めた高校一年のツチヤは、一日500個のボケを考えるというノルマを課す。このノルマは次第に増えていき、最終的には2000個になる。頭を壁に打ちつけながらも、ボケをひねり出す毎日。笑いのパターンがわかるようになり、瞬時に答えがだせるようになっていく。そして21歳の時にレジェンドになる。

のめり込み方が異常に思えるが、僕にもあったから分かる。基本、ぼっちなやつは、やることないので、一日中のめり込む。ずっとそのこと考えている。起きている時も寝る時も。技術習得はずば抜けて早い。

つまらない人は嫌な人

吉本の劇場作家となったツチヤだったが、嫌がらせを受けるようになる。嫉妬である。

どこの世界にもいるんだなと感じた。努力もせず、他人を嫉妬し、足を引っ張ることだけを考えるやつ。そういうやつに限って、上司の懐に入るの上手いんだよね。

実力主義だと思われていた笑いの世界は、嫌な人間だらけで、媚びたやつが仕事をもらえる世界だった。不条理な世の中である。実力主義なんて、業界が若手を呼び込むただの仮面。

僕はそれを分かってからは最低限の礼節や社交性を身につけるようになったけど、ツチヤは全然お構いなしだった。

地獄

売れない地獄。これ体験した人しかわからない。抜け出せても、なんとも思わない。「あぁ、やっとか…。」という感じで、嬉しさなんて一切ないんだよね。

多分お笑いも、他の仕事もそうかもしれないが、やってて楽しいのは最初の2~3年くらい。その後はずっと辛い。周りを見渡せば、やめていった屍だらけ。なぜ自分だけが残っているのか?なぜ自分が売れないのか?なぜ自分より実力のない人が売れているのか?よくわからない。

ツチヤはやめたいと言いながらも10年続けた。あんた偉いよ。よくやったよ。抜け出せないところまで、足を踏み入れちゃったというのもあるんだろうけどね。10年続けられる人なんて、10000人に1人いるかいないかじゃないか。ただ9999人の屍の上に立っても、感動は何もない。虚無しかない。

自転車の時代のロケット

自転車の時代に、ロケット作っても売れない。確かにそうだ。でも自転車を作るわけにはいかない。

客に媚びて、プロデューサーにへつらって、女子高校生に受けそうなネタ書けば、そりゃ金になるだろう。

しかし一度でもそっちへ踏み入れたら、二度と戻れなくなりそうで怖い。自転車で満足しそうだし、ロケットの作り方忘れそうだし。ロケット作れるのに自転車作って褒められても、嬉しくない。何より、自分は面白いというプライドを捨てることになるんだよね。自分がやってきたことを否定することになるんだよな。

最初から自転車を作ってる人は、楽でいいなと思う。でも多分そっちが正解なのかもしれない。トカゲの言うとおりかも知れない。

カイブツ

カイブツを飼っている人はいる。それがデカイか小さいかは別として。ツチヤのはゴジラ級だった。

僕も飼っているが、ツチヤのカイブツほど大きくない。餌も1日15時間くらい。それくらいでおとなしくなる。しかしツチヤのカイブツはボケを2000個食べないと、寝てくれない。おそらく1日中、餌をあげっぱなしだろう。カイブツの中のカイブツだ。

あの人

作中に出てくる、「あの人」とは、オードリーの若林のことだ。彼がツチヤの面倒を見ていた。オードリーのライブのネタを考えたりした。若林だけは認めていたそうだ。

世の中には、分かる人には分かるんだよなと思う反面、ロケットを分かる人なんて、たぶん日本人口の0.00001%にも満たないんじゃないか。そういう人に巡り会えただけでも奇跡。

若林も売れない時代に、渡辺正行に認められて泣いたって言ってたから、ロケットを認められない辛さを理解できるんだろう。

成功した人の使命は、まだ成功せず苦しんでいるロケットを認めてあげることだと思った。

最後に

闇は深いが面白い。というか深すぎて面白い。やっぱり一つのことに10年以上打ち込むって凄いよな。本人は辛いけどね。

かなりマイノリティだけど、同じ境遇の人に勇気を与える本だと思う。

cakesでも読めるよ。

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